※ツイッターで告知されてた企画のゲームネタです。未プレイの方は注意。
※戦闘メンバーはアラゴ・セス・ユアン・オズの4人パーティー
※戦闘後はパーティーメンバーじゃなくてもスキルの使用可能。
※『リカバー』→全体回復、『ヒール』→単体回復
続きよりどうぞ
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「――『リカバー』」
癒しの魔法によって、傷が治り疲れが取れていくのを感じる。
「すいません、『リカバー』はオレも使える魔法なのに」
「いや、ユアン君は攻撃にも魔力を使わないといけないからね。せめて戦闘後の回復は後衛の私に任せてほしい」
「……そう言って頂けると助かります」
「さっすがジョーさん」
ジョーさんの肩を叩きながらオズが笑った。
その顔色があまり良くないことに気づく。
「オズ、ちょっと来てくれるか?」
「何?」
隣まで近づき声を落として尋ねる。
オズは不思議がりながらも頷いてくれた。
木の陰に入り、他のメンバーからは見えないことを確認して呪文を唱える。
「『ヒール』」
魔法が発動する確かな手ごたえ。
喜ばしい事ではない。
回復魔法が作用する余地があるほどのダメージがまだ残っていたということに他ならないのだから。
「……どうしてわざわざオレだけ?」
「あれだけじゃ回復しきってなかっただろ」
「そりゃ悪魔くんあたりとは元々の体力値が違うからな。かと言ってオレのためにもう一回全体回復してもらうのも悪いし」
驚いたように瞬きする瞳は、本当にそれを当然だと思っているようだった。
理由の分からない苛立ちが湧いてくる。
思い返してみれば、もしかしてオズが自分から回復を求めたことはないんじゃないか?
「ジョーさんもオレも全体回復しか使えないってわけじゃないんだから、ダメージが残ってるならちゃんと言ってくれ」
「大丈夫。次に全体回復掛けるくらいまでは持つって」
「バカ。それでお前が倒れたら、全員が危なくなるんだ」
ああ、わかった。
オレは、オズが一人で戦っているように見えて、それが嫌だったんだ。
誰かのついでの全体回復なら構わないけど、自分だけ回復されるのは悪い?
そんな訳ないだろう。
オレたちを何だと思ってる。
「オレたちは『みんな』でパッチマンを倒しに行くんだ。我慢と遠慮の使いどころを間違えるな」
「言うねぇ」
オズが頭に手を当てて苦笑する。
穏やかな声に一気に冷静になった。
怒りにまかせて口にしてしまったが、出会ってから数日の相手にかけるような言葉ではない。
「……すまない、言い過ぎだった」
「いや、ユアンの言う通りだよ。オレが悪かった。これからは気を付ける」
ありがとなと微笑むオズにつられて、オレの頬も緩んだ。
「んー、でもやっぱりみんなの前では言い辛ぇなぁ」
「オズ」
「だからどうしても回復が足りない時は、こうやってユアンにお願いしてもいいか?」
オズが照れたようにオレの方を見る。
こうやって少しずつでもこいつの壁が崩れていけばいい。
嬉しさを抑えきれない声でオズに答える。
「もちろん」